このコーナーでは、養老線の近畿日本鉄道時代の様子について
紹介しています。以前は地域の米輸送を担った貨物列車の運行や、
名古屋からの急行「養老号」の運転があった養老線。養老鉄道へ
移管直前にはワンマン運転の導入やサイクルトレインなどの運転も
始まった。



近鉄養老線は、桑名から大垣を経由して揖斐に至る、全長50km余りに及ぶ路線である。(大垣〜揖斐は“揖斐線”の通称の方がなじみが深い)路線は濃尾平野を走り、ほぼ揖斐川の西を北上する形で敷設されており、終点の揖斐は揖斐川支流の粕川に突き当たる形でレールが止まっている。近鉄では数少ない狭軌路線のため、名古屋本線等との乗り入れはできず、孤立した運転形態により運行されている。これは、近年まで貨物営業が行われていた事にも関係し、10年ほど前までは貨物列車も運行されていた。貨車は桑名と大垣でJR(国鉄)へと継承されていたため、名古屋本線改軌時においても狭軌で残さざるを得なかったようである。また、以前には名古屋からの直通急行“養老号”(と言っても当然桑名で車両交換)が運行されていたこともあった。しかし近年では合理化が進められ、ワンマン運転等も実施されたが、近鉄本体での運行は断念され、平成19年10月1日より養老鉄道に運行が移管された。


1.列車運行体系

当線は全線においてワンマン運転が導入されている。しかし、実態は運転士+乗客専務車掌のペアで乗務することが多い。ドア扱いや自動車内放送などの運転業務はすべて運転士がこなし、車掌は無人駅からの車補発行と集札に専念する形である。この車掌は有人駅の続く区間などでは乗務せず、無人駅の続く区間を中心に乗り降りしていくつもの列車を乗務することで、要員を押さえている。しかしこの車掌乗務パターンはいくつもあり、全区間にわたり乗務する列車もあれば、全区間運転士のみの列車も存在する。(大垣〜北神戸や西大垣〜烏江などに乗務して折り返すパターンがよく見られる)また養老線の大垣〜播磨ではサイクルトレインも運行され、自転車の車内持ち込みもできる。


2.列車ダイヤと運行

大垣を境に、大垣〜桑名と大垣〜揖斐とに完全に2分されている。
@揖斐線(大垣〜揖斐)
区間運転はなく、全列車大垣〜揖斐の運転である。通常は40分ヘッド、朝夕ラッシュ時は20分ヘッド、昼間閑散時には60分ヘッドになる時間もある。全線の所要時分は24分、交換可能駅は池野と東赤坂の2駅。20分ヘッドの際には両駅で列車交換され、終着で即折り返すダイヤで、3本の編成で運用される。40分ヘッドになると2本使用で、池野交換が基本となる。(車掌は一つ手前の北神戸で下車し、池野で交換してきた列車に再び乗り込むのである。)60分ヘッドでは単に1本が往復しているため、全区間車掌乗務となる。
A養老線(大垣〜桑名)
全区間通しの列車とかなりの区間列車が存在する。通常は直通列車が60分ヘッド+桑名〜美濃松山の区間列車が60分ヘッドで、美濃松山以南は30分ヘッド、以北が60分ヘッドとなる。これに一部時間帯には大垣〜養老などが追加され、さらに朝夕ラッシュ時にはほとんどの列車が直通となり20〜30分ヘッドダイヤを構築する。早朝深夜等には、石津・駒野発着列車も存在する。全線の所要時分は85分程度、交換可能駅は西大垣・友江・美濃高田・養老・美濃津屋・駒野・美濃山崎・美濃松山・多度・下深谷の10駅。美濃高田〜駒野はすべて有人駅となり、車掌は同区間の南北で折り返すパターンが多い。


3.車両運用

当線には現在4系列の車両が存在するが、系列による運用区分はなく、編成両数(3または2両編成)によって運用が分けられている。検車区は西大垣に隣接しており、大垣〜西大垣には多数の回送列車が設定されている。
@揖斐線(大垣〜揖斐)
朝ラッシュ時は混雑が激しいため、所要3本すべてが3両編成充当となる。混雑が一段落すると順番に2本が入庫し、残った3両編成1本が昼間の60分ヘッド運用を一手に引き受ける(夕方に編成差し替え)。この3本の編成の入庫時間をずらすことで20〜40〜60分ヘッドへとダイヤを間引いていく。夕方には3両編成の差し替えに続いて3両編成1本と2両編成1本がそれぞれ出庫し、昼間からの3両1本と併せて再び3本体制となる。3両編成のうち1本は、揖斐停泊編成で、終電〜初電へと運用され翌日の朝ラッシュに備える。なお以前には、休日朝に一部2両編成へ振りかえられ、この2両編成が昼間も運用され、休日の昼間60分ヘッドは2両編成充当へ変更されていたこともあったが、現在では所定通りの3両編成が運用されている。昔語りになるが、旧型車が現役だった頃は朝ラッシュ時に、収容力の大きい441系による系列限定運用も存在していた。(さらに以前には中型車の4連が走ったこともあった)
また平成15年春のダイヤ改正からは大垣〜揖斐の揖斐線においても昼間時にサイクルトレインが運転されるようになり、同区間でも円板型のサイクルトレイン標を掲げて走る姿が見られるようになった。


A養老線(大垣〜桑名)
朝方には以外と2両編成も数多く運用されている。これは揖斐線に3両編成が集中運用されているためである。揖斐線の混雑が一段落すると3両編成に余裕が生じるため、今度は養老線へと運用されてくるため、昼間時はほとんどが3両での運転となる。これは、養老線で実施しているサイクルトレインへの対応によるもので、自転車の収容も考えてのことである。(前から2両目に自転車持ち込み可となる)桑名〜美濃松山の区間列車には1編成が充当され、昼間時の運用を一手に引き受ける。なお、営業は美濃松山までだが、車両は一つ先の石津で折り返しており、1駅間の回送が往復する。

4.養老線の車両     

【600系】
元名古屋線の1650+1750に元南大阪線の6000系のサハを組み込んだ3両編成(601.602F)と、元名古屋線の1650+1950(603.604F)、元南大阪線の6850+6850(606F)の2両編成からなる。サ551・552には団体使用を考慮してWCが設置されている。もっとも興味深いのは606Fで、モ6850のうち1両を電装解除の上、方転しモ6850と背中合わせに連結されたという異端編成である。なお605Fは元名古屋線の1615+1715を改造した編成で、、いわゆる1600系初期車の唯一の生き残りである。

【610系】
元名古屋線の1801〜1804Fをそのまま流用、611〜614Fとした2または3両編成4本の陣容だ。611・612Fはク530を増結した3両編成で運用され、通常はク511・512が先頭に立つことはない。614Fは1804F時代からの下枠交差型パンタグラフを搭載している。

【620系】
元南大阪線の6000系で、4両編成のうちサハを抜いて600系に転用した残り3両で編成を組む。4編成が在籍し、当線では唯一、揖斐・桑名よりに電動車が連結された編成となっている。入線に際して、中間車の元モ6150は電装解除してサ561となったが、パンタグラフは存置されたため、パンタグラフ搭載のサハとなり同系列の特徴となっている。

【530系】
元南大阪線の6850を電装解除した増結車で531・532の2両が在籍し、611・612Fの揖斐・桑名よりに連結され、3両編成で運用されている。606Fと同じく名車、ラビットカーの生き残りの貴重な車輌である。


        ★  ☆  ★  養  老  線  電  車  編  成  表  ★  ☆  ★

       ← 大 垣                                 揖斐・桑名 →

         601−551−501     611−511+531       521−561−621
         602−552−502     612−512+532        522−562−622
         603−503          613−513             523−563−623
         604−504          614−514             524−564−624
         605−505
         606−506

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